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注文設計前に目を肥やすシリーズ①-お屋敷「前田公爵本邸」

昨日私は、東京都渋谷区の駒場公園内にある「前田公爵邸」を訪れてきました。ここはこの秋2年半の大改修・復元を終え、この10月27日にリニューアルオープンした、昭和初期の「加賀百万石・前田家当主」の住宅で、洋館・和館から成り立ついわゆる「お屋敷」です。当時の贅を尽くしかつ見事な意匠のものも多く、将来、住まいのリフォームや新築を考えていらっしゃる方にも是非参考に訪れ「本物」をみてほしい邸宅の一つです。早速以下ご紹介しますね!

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「東京文化財ウイーク」期間の特別イベントとして、実は現在毎日、「駒場ガイドの会」さんが、ボランティアで無料の特別ガイドをやってくださっています。(詳細は、リンク先の東京都生涯学習情報のHP、旧前田家本邸の「公開のご案内」の枠内にあるイベント詳細PDFをご覧ください)

私も
1 洋館ルート(洋館内部のガイドツアー)
2 渡り廊下・壁泉ルート(洋館外部のガイドツアー)

と、それぞれ20分程度で廻らせてもらいました。
特に2 は普段入れない場所(下の写真、庭の「壁泉」など)も真近で見ることができます。
私は美術館などでも、音声ガイドがあれば(よくワンコインなどで小さなイヤホンを貸してくれますよね)それを借りるが好きなのですが、ガイドさんから直にきく情報は、掲示やガイドブックをみるよりもより分かりやすく感じます。みどころを手で指ししめし、「ここはこういう材料で」と聴覚、視覚を使って的確に説明してくださいますし、さらには場合により質問もできますしね。

そんな訳でこの文化財ウィーク中は特にオススメの場所です。
さらには目黒区の施設になっていますので、なんと入館料も無料と大変お得です。季節のよい秋の散歩コースとして訪れてみてはいかがでしょうか。

加賀百万石の力を感じる重厚と品質、そして戦前の「お屋敷」の見方


さて肝心の、お屋敷の説明ですが、関東大震災後に本郷のいまの東大内にあった前田家の土地と、ここ駒場の土地を等価交換したとのことで、建築は昭和4年。築約90年となる鉄筋コンクリート造、地下1階地上2階、です。

そもそも戦前のお屋敷建築について、「お屋敷拝見」(文・内田青造/写真 小野吉彦)という本の視点が面白いので抜粋してみます。

1)住まいは、自らの社会的ステータスシンボルとして施主の資本力にものをいわせて建てられていた。

2)家族の生活の場としてつくられていたが、同時に、客をもてなす場を用意するために、当時の最先端の技術、職人や芸術家の力といったものが注がれ、その結果としてきわめて質の高い外観やインテリアが形成されていた。

3)こうしてできあがった住まいを維持していくためには、大勢の使用人を必要とした。その結果、「家族の場」「接客の場」とともに「使用人の場」という領域が一つの住まいに複雑に融合化されていた。”

 

 

現代の新築・リフォームの参考として


前田邸そのものの説明は、公式HPなどに譲るとこととして、当時大変贅沢なつくりだったことが一目みて分かりますが、いろいろとこれから家づくりをなさる方にも参考となることがあります。そういった視点からみていきますと・・・

①例えば「セントラルヒーティング」とその存在の隠し方。地下にボイラー室があり各部屋のマントルピースに向けて配管がなされていますが、これを家紋の「梅」の花を施した鋳物で違和感なく部屋に溶け込ませています。(下写真)

また、各部屋の換気はのため天井に装飾のある換気口を施しています。このようにカモフラージュすることは、小さくとも部屋の調和を保つ隠し味のようなもので、「ディテールに宿る神」そのものです。

②1階にある「イングルヌック」。このステンドグラスも品が良いなと感じましたが、ここの天井の低さ、ちょっと奥まったソファとその上の本棚は、こじんまりとしたヒューマンスケールでの心地よさ。ガイドさん曰く、暖房を効率よくするための天井の低さとおっしゃっていましたが、前田邸1階の迎賓の用途や公の食事(夕食のみ食堂で行い、他は自室で食べたといいます)の場の天井の高さ、各室の広さと対比した中でこの場所のスケールは、暖房効率のみでなく同時におしゃべりの親密感や、少しの憩いの場となり遊び心のある場所、余裕・スラックの場所ともいえます。是非体感してみてください。

③単純な話として、エクステリア・インテリア・材料の使い方・ウィンドウトリートメントや照明・絨毯・モール・配色などの参考になります。なぜなら本物であるから。

まず外観、「スクラッチタイル」は当時のはやりのアールデコ建築などにも使われていますが、レンガ造ではなくあくまで鉄筋コンクリート造のこの建物の仕上げとしての外部タイルです。スクラッチとは引っかきという意味で、写真のとおり今回のリニューアルでは当時のタイルの復元がなされています。下の写真で手前が当時のもの、奥が今回の復元タイルです。

インテリア的にはこの前田利成公爵の書斎にも現れているような配色の妙。壁の「金唐紙」は今回改めて当時と同じように作ったそうです。他の部屋も結構金がそのまま乗った壁紙を多く使っていますが、濃茶の木部の多さや天井のモールディング、誂えのカーテンなどと相まってそんなに目立たないのが不思議ですね。

各部屋のシャンデリアや中国製の絨毯、ソファーなどの装飾もあるため、壁の金はマッチするのが分かります。

↑床に埋め込まれた絨毯のため段差がない。長女さんのお部屋。

↑壁紙に金の入った応接間。右のほうが広く格式が高く作られているため、天井と壁の間のモールの廻り縁にも文様が入っており、扉の上にも欄間で重厚な造りになっている。

↑もちろん大理石のコリント柱(上の装飾は「強い」というアカンサスがモチーフ)重厚さもみてみてください。

↓品のよい廊下の壁紙

↓英国ハミルトン社特注の家具類のある寝室

↓このお屋敷で一番華やかといわれた奥様のサロン

④洗濯物などの裏動線

当時、100人以上の使用人がいたという時代背景の中、八角形の三階部分はランドリールーム、兼子供の遊び場、つまり室内干しに使われていたとのことです。やはり日当たりのよさを重視すると同時に、徹底的な使用人動線の裏配置は参考になりますね。ただ、現代に応用するには、家事も家人がするわけですから、やはり家事動線の使い勝手の良さと、くつろぐ部屋とのすみ分けは必要だと思うのです。

 

駆け足で前田公爵邸洋館を訪ねてみました。お読みになった方の参考になれば幸いです。

ぜひ、今週の「文化財ウイーク」中、そして今後も、一度は訪れてみる価値があると思いますのでどうぞ気に留めてくださいね。

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